スターリングマルキート劇場

  • 場所は悪魔の悲しみから機械炉SIGMAとの中間地点。たき火付近。

ヴァンテージ
悪魔の悲しみの西で発見。


音声:

世界滅亡ダイアリー、5日目。
グレイ・スワームがタートルスマッシュの前座をしたあの晩餐は…薬のやりすぎでぶっ倒れてた。あの時俺は15。
2日後病院で目を覚ましたら、母さんが見舞いに来てくれてた。

テキスト:

母さん、

ライブのことは何も覚えていない。バンドも曲も観客も。
あの夜はスカイダイブとスネークをキメすぎてて、バッシュコアの轟音と脳内を流れる血の音との区別がつかなかった。
しかもその上、レイザーウィングを1錠8ドルで売ってる売人に会ったんだ。

そう、レイザーウィング。
30年代の戦闘機にちなんで名づけられた合成ドラッグだ。
その戦闘機は、うちの家族と不幸な縁がある。

だから俺も不吉な前触れと考えて、断ってその場を離れて…
あれ、離れたっけ?

もしくは4錠買って一気にのんだのかも。

どっちだったっけな。

警察の調書によると、俺は逆上して売人に襲いかかり、そいつの持っていたブツに火をつけて、駆けつけた保安ドローンに立ち向かった。
そう感じたのは自分だけだったか。俺は5万ボルトのショックを喰らった。
それだけならどうってことないはずだが、脈拍が既に通常の3倍になっていたから一発で死んだ。
医療ロボットが急行したらしいけど1台目はエラーが発生、2台目は人混みで立ち往生。俺は2分近く死んでいたらしい。
蘇生後も血流内にあれこれ混じっていたから予断を許さない状態だったとか。

生き返ってあから最初に見たのは母さんの顔だった。泣いた跡がついてた。
メイクが崩れて左右の頬に黒い線が垂れていてさ。

目が合った時は怒鳴られるかと思った。
俺もヘロヘロだったけど怒鳴り返す気でいた。
一度死んだって反抗はやめないつもりだった。

だけど、怒鳴られなかった。
ワイアットに向かって外で待つよう静かな口調で言って、ベッドの真横に椅子を寄せて、俺の手を握った。

手を引っ込めたかったけど、できなかった。

母さんの力が強かったからじゃなく、手のぬくもりのせいで。
優しく握ってくれた感触のせいで。

母さんはささやくように言った。
「7年前にお父さんを亡くした時、あなたの存在が私の生きる理由になったのよ」。
母さんは取り囲む医療機器のチューブやパイロットランプを見上げ、首を振った。「誰にも愛されてないなんて、どうして思うの?あなたが死んだら、私の希望と夢そしてお父さんの希望と夢も、共に消えてしまうのよ」

母さんの手が伸びてきて、髪に触れた。雷が落ちたような衝撃だった。
バラバラだった心が瞬く間に復元した気分だったよ。俺はずっと泣きじゃくった。
何年分も泣いた。母さんは手を放さなかった。俺も放そうとしなかった。

その翌日、治療を受けることにした。
それ以後、二度とクスリには手を出さなかった。
って言えたらいいんだけど、知っての通り、そこまでうまくいかなかった。

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Last-modified: 2017-05-20 (土) 13:33:11 (606d)