イーグルキャニオンの詳細画像

イーグルキャニオン †

• 場所はメリディアンゲートからすぐ上の辺り。
  高い位置にあり岩を登らないと行けない。
  南南東辺りから登れるポイントがある。
  

メリディアン付近で発見

音声：

世界滅亡ダイアリー、9日目。
この場所でテントを張っていたら、ワイアットから電話が。
急いで駆けつけたけど、母さんは意識を失ってて…。
別れを言うことさえ出来なかった。

テキスト：

母さん、

AMOS-15の打ち上げ後、ここにキャンプしに来るつもりだった。
9ヶ月間も残業しまくって疲れてたから、また忙しくなる前に週末を使ってリラックスしたいなと思ってね。

テントを設営している時にワイアットから着信があった。緊急事態だと言われたよ。
リフトスピンのヴァーティを呼んで27分でデンバー総合病院に駆けつけた。

間に合わなかった。

母さんは既に昏睡状態だった。何が起きたのか理解できなかった。
ワイアットに説明を求めても涙で言葉が詰まり、治療ターミナルを指さすばかりだった。

真相を知ったのはホロを読んでからだった。1年前に診断されていたこと。
遺伝子治療と脈管のポリマー置換への拒絶反応。携帯透析でしのいだ半年間。

俺にすべてを内緒にしてたのが信じられなかった。
どんなに忙しくても週に1、2回は電話してくれた。
俺の最新プロジェクトの自慢や職場のグチなんかを聞かされながら、ゆっくりと死に近づいてたってことか？意味がわからなかった。

ワイアットの所に戻り、説明しろと問い詰めた。
「俺の邪魔をしたくない」母さんがそう言ってたらしい。
「大事な仕事をしていて、集中しないとダメだから」って。

AMOSの打ち上げとか、地球に持ち帰るパラジウムやロジウムなんかが、その地球にいる母さんよりも大事だってことか？

ワイアットが何度も言ってた。母さんがどれだけ俺を誇りに思っていたか。
あの「先へ、上へ」というセリフも真似て。「お前は仕事に戻るべきだ。
彼女もそれを望んだだろう。病院には私が残って、何かあれば連絡するから」と。

仕事には戻らず、休みを取った。
上司二人を説き伏せて、迷宮のような人事部の自動メニュー、人事管理AI、ケツの穴ミニマムな福祉担当役員をめった切りにして、ようやく休めることになった。

それからは7日間は母さんの横に座っていた。
事あるごとにレッドロックの時の病院を思い出して、母さんが目を覚ました時は最初に俺の顔を見せたいと思いながら。

8日目に臨終を告げられた。

葬儀が終わり、仕事に戻ったが…身が入らなかった。
集中しろ、それでいいんだ、目指していた場所にいるだろうと自分に言い聞かせようとした。先へ、上へ。

だが仕事が遅れ出した。
上司に緊急面接に呼ばれた時、落ち着いて対処し、批判を受け入れて改善を約束するつもりだった。

結局のところ、キレて怒鳴った挙げ句、突然、力が抜けて延々とすすり泣いた。

2分後、3体の保安ドローンのお世話になって、ファロ社の建物の外につまみ出され、まぶしい陽光にさらされながら乱れた服装を整えていた。
フォーカスに通知が来て、その日は帰宅し、月曜日に懲戒面接を受けるよう指示された。

家には帰らなかった。別の考えが浮かんだからだ。
単なる思いつきじゃなかったのは、しばらく前から、そうしようと考えていたんだろう。

オートバーンを呼んでパイオニア・パークに向かった。
売人と接触するため、10分ほど探し回った挙句、警察じゃないことを証明するためウソ発見器を受けた。

クスリを家に持ち帰り、ひとたび使い始めると止まらなくなった。
ダスター、スネーク、スカイダイブ、オーバーキャスト。
レイザーウィングがないだけマシか。

電話には出ず、月曜朝の懲戒面接には行かなかった。
友達が寄ってくれて、俺が開けるまで玄関の扉を叩き続けた。
状況を察して手を貸すと言ってくれた。

治療を受けることにしたが、見通しは暗かった。
会社を休むだけでも痛いのに、精神的な理由だなんてキャリアの終わりだ。
そりゃあ、制度上はクビにされることはない。だが、FASのやり方はよく知ってる。
首を切る方法を必ず見つけてくるだろう。俺の未来はお先真っ暗。

当時はどん底だと思ってたけど、そんなことはなかった。
その後、もっともっと落ちることになるんだ。