狂王 †
- 場所はメリディアン内のテーブル。石のブロックのようなものが置いてあるテーブル。
冊子
各頁は慌てて書き殴られたような筆跡の文字で埋め尽くされている。
狂王の時代
この手記を目にする者に警告する。
これは狂王ジランの行いの真実を伝える一遍である。
これらの文字は血で書かれている。
書き伝えるのもはばかれるようなあまりの蛮行に、汝そして語りてのために太陽の浄化を祈り求めてほしい。
この手記を読む者は、生け贄を奪うために隣国に与えた痛ましい傷跡、赤の動乱について知ることになるだろう。
狂王は村々から丸々一代ずつを切り捨てるよう命じた。
生け贄を出す気になるように、そして次の動乱の際に戦える男を削るために!
穀物を供物として差し出したウタル族の殺戮は目に余り、次なる収穫でトウモロコシが死者の血を吸って青や黒に染まったという。
サンの死神は、倒れたオセラム族のなきがらを村の壁際に積み重ね、配下のハヤブサたちが踏み台にして入れるようにしたという。
未開の東部の恐ろしき蛮族、ノラ族の谷では、木々から見せしめの死体が垂れ下がるほどの非道がまかり通った。
狂王が自らの民に対して行った略奪に好奇心があるなら、それは存分に満たされるだろう。そこには太陽の広場で死に処せられた者たちの末路がつづられている。
まるで城門の外に積み上げられたどくろが語ったかのように、つぶさな記録が残されている。
狩人の館に対する虐殺についても戦慄を禁じ得ない語り口となっている。
館のタカの一員として、夜明けから夕暮れまで砂を血に染め、最後の一人まで戦う想いはいかなるものだっただろうか。
あるいは解き放たれたベヒーモスが木も骨もかまわず粉砕する姿を目撃した、その一員たるや。
正気の沙汰を越えた流血を狂王は冷酷な眼差しで見つめ、実の息子が死の広場で腹をえぐられる様からも目を背けることはなかった。
淡い髪のカダマン、昇る朝日のカダマンよ、父に異を唱えたがために、このような罪に身と命を落とさんとは!
狂王ジランのもたらした悲劇をこうも正しく網羅した手記は年代記にも、サンの祭司たちの年表にも登場しない。
歴史、そして勇敢なる読み手への責務として、おぞましき仔細も除くことなく、重い心でこれらの出来事をここに記す。
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