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#author("2017-03-14T19:22:19+09:00","","")
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#author("2017-04-24T21:52:00+09:00","","")
*クレイム [#m7ecf1d7]
-場所は太陽の砦の北側のたき火アイコン付近。~
吊るされた貨物に置いてある。衛兵が立っている見張り台のような場所から振り返ると見つけられる。~
書物。~
安価な羊皮紙に書かれた書物。~
口論するオセラム族の男たちが描かれている。~
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>クレイム探訪~
旅多きアラム これを記す~
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私がしばしば家の窓を開け放つのは、街の匂いや風景などを楽しむのみならず、路上で交わされる問答を小耳に挟むためでもある。~
そして同じくらいしばしば、声高に問う声を耳にする。~
あのオセラム族、奴らは何なのだ。突如として隣人どころか友軍だと言われたが。~
なんであんなものを食べ、あんな風に口論するのか?~
あのきつい臭いはどうにかならんのか。どうして飲んでばかりいるのか。~
~
闇を貫く陽光のように、疑問を解くにはその出どころをたどるに限る。~
なので好奇心の肩代わりとして、クレイムへと向かう商隊に同行できるよう手配した。少なくともブレイクウォールを越えた最初の村くらいまでは。~
~
クレイム。地味な一帯で、火から出た煙が細長い高木の合間に立ちこめている。~
オセラムによる飽くなき鉄探しで掘りかえされなかった地面は氷に閉ざされており、~
氷の下にもまた氷、そして石だらけの土となる。困るのは、すすだ。~
あたり一面がすすだらけだ。~
旅向けの傷みにくい服装だったが、汚さずに過ごすのは土台無理だった。~
みじめそうにしている私に気づいたオセラムの洗濯女たちが申し出てくれたが、桶の中の水の色を見てお断りした。~
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清潔さはオセラムの美徳ではないようだ。~
村には粘板岩を重ねて作った防壁や、丈の低い石の丸小屋などが並んでいたが、風雨にさらされている印象だった。~
クレイムでの風雨とは、油の混じった冷たい雨と、霜である。~
それでも屋外の炎はシューシューと音を立てつつ燃え続け、人々には活気があり忙しそうであった。家畜用の離れを思わせる雰囲気だ。~
(同族に英知をもたらす苦労と思えばこそ耐えられる。)~
~
オセラム族には祭司も王もおらず、そのような肩書きを耳にすると唾を吐かれてしまうほどだが、名士と呼ばれる村の賢人たちの助言には従うようだ。~
各集落でそのような役職を投票で選ぶようだが、目的は終わりなき口論をするためとさえ思える。夜明けから夜遅くまで、まつりごとや税の話でお互いに怒鳴り合う。~
翌朝になると、反論しに来た村人たちが列をなして待っているありさまだ。~
~
その種の列に数時間並んでみたが、子供たちが悲鳴をあげ、鳥はけたたましく、実にけたたましく延々と鳴きわめき、わらと雨と足跡にまみれた荷車の轍の上にこだましていた。~
ようやく三人の名士たちとの面会が叶い、問いかけができる番になったので、両部族の間の平和について、彼らの意見を求めた。~
~
意見を求めた、の文字面ほど容易な話ではなく、私の言葉が終わる前にオセラム族たちが雑言混じりの口論に突入した。~
私は遮られ、怒鳴りつけられ、いわれのない扱いまで受けた。~
ようやく声をあげて言い返した(あれは爽快な一瞬だった)時にやっと、嫌々ながらの返事が得られたのである。~
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彼らの意見は、控えめに言っても色々とはき違えており、~
彼らの言葉でこの一筆を汚したくはない。~
言えるのは、彼らが両部族間の自由な交易の利点をわかっており、長年の戦争が終わったことでそこから実際に恩恵を受けていることだけだ。~
ただし、クレイムの外で商いをするオセラムのうち、税を収めている者は僅かであり、戻りすらしなくなる者もいるようだ。~
名士たちは、彼らが「カージャさながらの」暮らしに毒されて還らぬ者となったと言い張る。そう言い張りつつ床に唾を吐く。~
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これに対し、私は文明的な暮らしに対する不信と恐れはまさしくオセラムらしいと言い放った(屋内で唾を吐く気にはさすがになれなかった)。~
周囲に大きな動揺が走り、その後、私は村人たちの肩にかつがれて建物の外に運ばれ、通過儀礼とおぼしき輪の中に入れられた。~
それは人ではなく、まるで機械のためのようなものだった。~
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目が覚めると荷車に乗ってピッチクリフに着かんとするところだった。~
声は枯れ、両腕は度重なる力比べで感覚がなく、舌には機械油を思わせる酒の味が残り、頭は二つに割られたかのように痛んだ。~
けんか、暴飲、怒鳴り合い以外に、オセラム族には深みはあるのだろうか。~
命がけで答えを求めた結果がこれだ。~
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まあ、ひとことで答えれば、ない。~
だが名士たちの懸念していたとおり、太陽の輝きとメリディアンの栄光がいつか、この荒くれたちの一族の角を和らげる日が来るのだと願いたい。~
#ref(クレイム.png)
~
#ref(クレイム1.png)
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